「最後の手紙」
十月の風が、街の木々を金色に染めていた。
公園のベンチに座る老婦人・美代(みよ)は
「最後の手紙」 十月の風が、街の木々を金色に染めていた。 公園のベンチに座る老婦人・美代(みよ)は、小さな封筒を胸に抱いていた。 封筒の宛名には、震える字でこう書かれている。 「ゆうへ」 50年前、彼女の婚約者・優(ゆう)は戦地へ向かった。 「必ず帰ってくる」 そう言って渡されたのが、この手紙だった。 ──でも、彼は帰らなかった。 彼の遺体は見つからず、手紙の中身も読めなかった。 “開けたら、彼が本当にいなくなる気がした”からだ。 それからの人生、美代は一度も誰かを愛せなかった。 けれど今日、医師から「余命わずか」と告げられた帰り道、 ふと心