次世代船で日本5社連合 日本郵船など海運3社と今治造船・三菱重工
中韓の台頭で劣勢になった国内造船を再興する足がかりとします。まずは液化CO2運搬船を想定。造船業は、トランプ米政権との連携の要としても重要性が高まっています。
今回の「海運3社×造船2社」の連合は、単なる業務提携というより“次世代船を共同で作り切る体制づくり”に見えました。特に、設計・開発を担う会社としてMILESを設立し、造船2社が51%を出資して主導権を持つ構造は、国内造船業をもう一段強くする意思表示だと感じます。現場のノウハウ(造船)と、運航・貨物側の要件(海運)を最初から同じテーブルで詰められるのが強みです。 ニュースでよく出てくる「液化CO2運搬船」ですが、私はここが一番実務的な論点だと思いました。CO2は気体のままだと体積が大きく、輸送効率が悪いので、液化して大量に運ぶ発想になります。CCS(回収・貯留)やCCUS(回収・利用)を前提にすると、発電所・製鉄所などの排出源から、貯留地点までの“CO2物流”が必要になり、そこに専用船の需要が生まれます。海運会社側としては「どの温度・圧力条件で運ぶか」「荷役設備をどうするか」「安全基準や保険はどうなるか」が死活問題で、造船側としては「タンク設計」「材料」「断熱」「万一の漏えい対策」「保守性」など、造り込みが難しい領域です。ここを最初から共同開発にするのは合理的です。 また、国内造船が中韓勢に押されてきた背景を踏まえると、“価格勝負”より“新しい市場(脱炭素・次世代船)で先に標準を取りに行く”戦い方にシフトしているように思いました。実際、次世代船は規制対応(温室効果ガス削減)や新燃料対応などで仕様が複雑になり、運航データを踏まえた設計最適化が重要になります。海運会社が実運航のデータ・要件を持ち、造船会社が設計・建造の技術を持つので、両者が組む価値が出やすい分野です。 検索で「三井海洋開発×三菱重工×川崎重工×日本郵船」など、海事関連の大手名が並ぶのをよく見かけますが、私の理解では、海洋開発(FPSO等)・造船・海運は領域が隣接しており、脱炭素やエネルギー安全保障の文脈で協業が増えやすいです。株を調べる人が多いのも納得で、こうした提携は短期の材料というより、中長期の受注力・開発力に効いてくるタイプのニュースだと思います。 最後に、読み手として気になったチェックポイントも置いておきます。①MILESがどこまで具体仕様(CO2の輸送条件やサイズ感)を詰めていくか、②実証・初号船のタイムライン、③国際規則(安全基準・環境規制)への適合方針、④量産・系列サプライチェーン(タンク・機器)の確保、の4つです。このあたりが続報で見えてくると、国内造船復活の“足がかり”が本当に形になるか判断しやすくなるはずです。
