【恋の終わりを描いた短編集】
393冊目
#江國香織 さん
満足度 ★★★ 3.5
読みやすさ ★★★
久々に大人の恋愛を読みたくなり、江國さんの直木賞受賞作を手に取りました✨
——内容をザクっと——
身も心も満たされていた恋の終わり。その喪失に押しつぶされそうになる痛みを描いた表題作をはじめ、恋の痛みを知るからこそ沁みる全12編を収録した短編集。
恋の終わり、すれ違い、孤独……
初恋、片思い、浮気、不倫……
12の恋愛のかたちが詰まっていました。どれも短くてサクッと読めるけど、読者に最後の解釈を委ねる作品が多い印象でした🤔この後、結局どうなったんだろうと考えさせられたり💭
個人的に好きだったのは「じゃこじゃこのビスケット」。17歳のほろ苦い初デートの記憶がぎゅっと詰まっていて、とてもよかった。淡い記憶がよみがえりました。
表題作「号泣する準備はできていた」も印象的でした。
他の女と寝てしまった、と謝る隆に、「知ってるわ」と強がって答える文乃ですが…その後の一文で、
『私の心臓はあのとき一部分はっきり死んだと思う。さびしさのあまりねじ切れて。』
この表現がうわっときました。
不倫や浮気は、結局最後は誰も幸せになれないのに。それでも繰り返してしまう人間の弱さが、リアルに描かれている気がしました。他の女のところに行っても、電話越しに名前を呼ばれるだけで正気を保てなくなる。その不器用さが、ただただ寂しい。
「溝」も印象に残っています。離婚協議中の夫婦が、姪の誕生日を祝うために旦那の実家を訪れる話。もちろん、その事実は隠したまま。読んでいてこちらまでソワソワしてしまう。恋愛って、冷めるとここまでになってしまうのか……と。
【印象に残った言葉】
「人生は危険よ。そこには時間が流れてるし、他人がいるもの。男も女も犬も子供も」
「自由とは、それ以上失うもののない孤独な状態のことだ。」
「私は独身女のように自由で、既婚女のように孤独だ。」
わたしは個人的には、江國さんは短編よりも
『きらきらひかる』のような長編の方が好きだな〜なんて思いました!でも、大人の恋愛を垣間見れる感じがゾクゾクでした😳
江國香織さんの短編集を読んで改めて感じたのは、大人の恋愛は単なる甘美なロマンスではなく、心に刻まれた傷や孤独が共存する繊細な世界だということです。特に不倫や浮気のエピソードでは、誰も幸せになれない苦しみが描かれており、登場人物の弱さや儚さが生々しく伝わってきます。こうした作品はいずれも短く読みやすいながら、後の展開を読者に委ねるクローズで余韻の残る作りになっており、読み終わったあともしばらく感情が揺さぶられます。 私自身、「じゃこじゃこのビスケット」という初恋のほろ苦い体験を描いた作品に共感しました。17歳の頃の淡い思い出や初デートの緊張感がまざまざと蘇り、誰しも経験する初恋の切なさや成長の瞬間が巧みに表現されていると感じました。 また、作品中の『私の心臓はあのとき一部分はっきり死んだと思う。さびしさのあまりねじ切れて。』という表現は深く心に響き、不倫や恋の終わりがもたらす痛みの重さをリアルに感じさせてくれます。恋愛は楽しいだけではなく、時に自分の心の一部の死を経験することがある――それを描き切ったこの短編集は、大人の恋愛の真実や複雑さを理解したい人にとって貴重な読み物です。 さらに、「溝」という作品で描かれる離婚協議中の夫婦のぎこちない関係にも引き込まれました。表面上は普通の家族の行事を装いながらも、心の溝が徐々に広がる様子が緊張感とともに伝わり、恋愛や結婚に伴う孤独やすれ違いのリアリティを感じました。こうした細やかな人間模様も江國香織作品の魅力の一つです。 今回読んでみて、江國さんの作品は短編よりも長編で丁寧に感情を掘り下げるタイプの方が自分には合うかもしれないと思いましたが、それでもこの短編集に描かれた大人の恋愛の多様な側面を垣間見るのは大きな刺激になりました。恋愛の甘さや切なさ、そして人間の弱さを深く味わいたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です。






