ないものだらけの結婚

結婚式で捨てられて、いまは御曹司の最愛妻

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💥あらすじ:

結婚式当日、三年付き合った恋人に捨てられた瀧ノ上清穂。「田舎者」と見下され、彼が選んだのは”初恋”。しかし彼女の正体は、海都一の財閥令嬢。失恋をきっかけに、莫大な資産と誇りを取り戻す。復讐、逆転、そして新たな恋——傍に現れたのは、冷徹と噂される実業家・藤原。「おまえが俺の妻でよかった」と言う彼は、誰よりも彼女を信じ、甘く守る。裏切りの先に咲く、もう一度の恋に心が揺れる——

📕第1章:クズ野郎の儚い月明かり

瀧ノ上清穂は、ついに北条渉と結ばれるのだ。

厳かに響く結婚行進曲のなか、純白のウェディングドレスに身を包んだ瀧ノ上清穂は、ゆっくりと赤いバージンロードを歩き、祭壇の向こうに立つ北条渉のもとへと向かう。

北条渉は白いタキシードに身を包み、金色のライトが彼に降り注ぐ。その柔らかな光が、彼の持つ穏やかで上品な雰囲気をより一層引き立て、まるであの頃の少年のようだった。

ふたりが出会って三年――数々の困難を共に乗り越えてきた。そして今、彼女の願いはようやく叶おうとしている。

ただひとつ残念なのは、この結婚が家族には祝福されていないということだった。

北条渉が一歩前に出て、彼女にブーケを手渡したその瞬間――瀧ノ上清穂の目には、喜びの涙がにじんだ。

「新郎よ、あなたはこの女性を妻とし、彼女と結婚の誓いを交わすことを誓いますか? 病める時も健やかなる時も、いかなる理由があろうとも、彼女を愛し、支え、敬い、受け入れ、生涯をかけて貞節を尽くすと誓いますか?」 神父は祭壇に立ち、優しい眼差しでふたりの新郎新婦を見守っていた。

胸の高鳴りを必死に抑えながら、瀧ノ上清穂は期待を込めて北条渉を見つめ、その口からの「はい」を待ち望んでいた。

北条渉の表情は険しく、感情のこもった返事はなく、口を開こうとしてもためらっていた。

そのとき――

「お兄ちゃん、たいへん!」泣きじゃくって涙で顔をぐしゃぐしゃにした北条理彩が突然外から駆け込んできて、北条渉の言葉を遮った。彼女はまるで迷子の子どものようにしゃくり上げながら言った。「陽香お姉ちゃんが……その……」

瀧ノ上清穂の胸に、得体の知れない不安が込み上げる。眉が知らぬ間に曇り、北条渉を見つめる眼差しには緊張の色が滲んでいた。そして、彼の手を握る指先に、自然と力がこもる。

南雲陽香――その名が北条渉にとってどれほど大きな意味を持つか、瀧ノ上清穂は痛いほど知っていた。

彼にとっての「儚い月明かり」、この人生でどうしても手に入らなかった愛。

かつて北条家が没落したとき、南雲陽香は海外に渡るチャンスを取るために北条渉を手放した。誇り高い彼は、そのことを許せず、陽香とのすべての縁を断ち切り、代わりに選んだのが瀧ノ上清穂だった。

だが――一ヶ月前、南雲陽香は突然ふたたび姿を現した。

北条渉の顔色が一変し、張り詰めた声には動揺がにじんだ。「陽香が……どうした!」​

「陽香お姉ちゃん、血がいっぱい出て……全然止まらなくて……!お医者さんが、命が危ないかもしれないって……!」と、理彩は声を震わせて訴えた。

その言葉を聞いた瞬間、北条渉は瀧ノ上清穂の手を振り払って、足早に式場を飛び出していった。

「行かせない……!」瀧ノ上清穂は一歩前に出て、北条渉の手を必死に掴んだ。身体は微かに震え、視線は彼から離さなかった。​ 「北条渉……今日は、私たちの結婚式なのよ。それでも行くっていうの?」

観客席からはひそひそとささやく声と、あからさまではないが皮肉めいた視線が次々と彼女に注がれ、それは鋭い刃のように瀧ノ上清穂の胸を突き刺した。

涙で赤く染まった目で北条渉を見つめながら、彼女は懇願するようなか細い声で言った。「北条渉……お願いだから、せめて式だけでも最後まで……」

「陽香は……俺を助けようとして事故に遭ったんだ。放っておけるか!」

北条渉は再び彼女の手を振り払おうとしたが、目の前の女は頑なにその手を離そうとしない。その表情は次第に険しさを増し、目には冷たい怒気が宿った。「瀧ノ上清穂……お前もわかってるだろ?俺たちの結婚は“取引”だったはずだ。お前はただ「北条の妻」としての役割を果たせばいい。俺のことに口を出すな。」

取引――

瀧ノ上清穂の瞳孔が震え、信じられないという表情のまま、冷ややかな北条渉の顔を見つめる。その目の驚きは、やがて薄ら笑いに変わっていった。

やがて彼女の口元に、嘲るような笑みが浮かんだ。かすかな悲しみを含んだ声が、ふと震えた。「……あなたにとって、私たちって……ただの『取引』だったのね?​ !」

📕第2章:この目は…

「ああ。」北条渉の返事は断固としていて、一片の迷いもなかった。

瀧ノ上清穂の胸がぎゅっと縮み、重い鉄槌で打ちつけられたような痛みが、じわじわと広がっていった。

北条は気のない様子で、心のこもっていない「悪かったな」と言い捨てて、そそくさとその場を去った。

清穂はその場に立ち尽くし、去っていく北条の背中を見つめながら、心がまるで千枚通しで刺されるように何度も何度も刺され、そのあまりの痛みに息が詰まりそうになった。

足元から這い上がるような冷気が、容赦なく四肢の隅々まで染みわたっていく。

あの年、北条が北条家の経営を引き継いだ頃、ちょうど資金繰りが絶たれ、破産寸前の危機に立たされていた。

「今は会社が不安定で、お前に安定した未来を与えられない。でも、経営が軌道に乗ったら必ず迎えに行く」——そう、彼は確かにそう言ったのだ。

清穂はその言葉を、ずっと胸に刻んできた。家族に北条を受け入れてもらうために、早く彼の妻になるために、自分の立場を利用して知恵を絞り、共に商戦を駆け抜け、無名だった彼を世の注目の的にまで押し上げた。

なのに、三年もの歳月を共に過ごしてきたというのに、彼にとっては――それがただの「取引」に過ぎなかったなんて。

結局この恋で、本気になっていたのは最初から最後まで、自分一人だけだった――!

あの“白月光”の前で三年間捧げてきた自分の想いなんて、滑稽なほど虚しい茶番だったのだ。

瀧ノ上清穂は唇を強く噛みしめ、こみ上げる涙を必死に堪えたが、それでも涙は糸の切れた真珠のように次々と頬を伝っていった。

胸の痛みが体中で暴れ狂うように叫び、彼女の身体をわななかせた。

そんな惨めな姿を見て、そばに立っていた北条理彩の唇には、あからさまな嘲笑が浮かぶ。「瀧ノ上清穂、あんたがしつこく食らいつかなきゃ、兄さんがあんな学歴も家柄もない田舎女と結婚なんてするわけないでしょ。空気読みなさいよ、さっさと北条家から出て行きなさい!」

北条理彩の図々しい言葉に、清穂の心はすっかり冷え切っていた。「忘れたの? 今の北条家があるのは、私がいたからよ!」

「よくもそんなデタラメを!」 理彩は清穂の鼻先に指を突きつけ、憤然と叫んだ。「自分のこと、どれだけ偉いと勘違いしてるのよ? あんたなんかいなくったって、北条家はこれからも風が吹き水が流れるように、何の支障もなくやっていくんだから!」

清穂は心臓がギュッと握りつぶされるほど痛んだ。――北条家の人たちは、結局私のことを、こんなふうにしか見ていなかったのか!

「もういいわ。今日のことは、これで終わりにしましょう。」 北条結衣はうんざりした表情で立ち上がり、清穂の前まで来ると、まるで目の前に汚物でもあるかのような嫌悪をその瞳に宿していた。「見なさいよ、自分がどれだけみっともないか。あんた一人が恥をかくのは勝手だけど、北条家まで巻き込まれるのは御免なの。」

そう言い放つと、結衣は何事もなかったかのように作り笑いを浮かべ、今日の来賓たちに愛想よく声をかけ始めた。

清穂はその場に立ち尽くし、三々五々と立ち去る客たちを茫然と見送っていた。――ずっと夢見てきたはずのこの結婚式が、どうしてこんな滑稽な茶番劇になってしまったのだろう。

どうして彼女のまっすぐな想いのすべてが、こんな形で踏みにじられなければならないのだろう?

それはただ、愛した相手が、自分を愛していなかったというだけの理由で?

瀧ノ上清穂はゆっくりと目を閉じ、またしても涙が頬を伝って零れ落ちた。まるで割れやすいガラスのように、脆くて、無力だった。

それから三十分後、清穂は宛てもなく静まり返った街をさまよっていた。帰る場所を失った魂のように。

気づけば空から雨が降り始め、やがて大粒の雨は土砂降りへと変わっていった。

周囲を見渡しても、雨宿りできそうな場所はバス停のあたりしかなかった。清穂は裸足のまま、そこへ向かって駆け出した。

泣きっ面に蜂とはこのことか――鋭い石が足の裏を裂き、激痛に眉をひそめながらも、清穂は歯を食いしばって足を引きずりながらバス停を目指して走り続けた。

ビーーー……

突然、耳をつんざくようなクラクションの音が、静まり返った通りに響き渡る。

猛スピードで迫ってくる車を目にして、清穂の瞳は見開かれ、恐怖で激しく震えた。

📕第3章:彼女を腰に巻き付けた

瀧ノ上清穂の脳裏は真っ白になり、両脚は鉛のように重く、その場から一歩も動けなかった。

目の前を走り抜けた車は、まるで黒い稲妻のように彼女のすぐ横を掠めていった。

その衝撃的な気流に煽られ、清穂の身体は勢いよく地面に投げ出された。

加害者の車はこのまま逃げ去ると思われた。周囲には何もなく、証拠を残さず逃げるにはうってつけの場所だったから。

だが、意外なことにその車は方向を変え、清穂の目の前でぴたりと停まった。

ドアが開くと、まず視界に飛び込んできたのは、黒のオーダーメイド革靴。そして、まっすぐに伸びた長い脚が、力強く確かな足取りで清穂へと近づいてくる。次の瞬間、黒い傘が静かに彼女に差し出され、無慈悲に降り注ぐ雨を遮った。

「大丈夫か?」藤原雅敏の低く澄んだ声が、雨音の隙間からゆっくりと清穂の耳に届いた。

清穂が顔を上げると、そこには鋭い輪郭と明瞭な顎のラインを持つ男が立っていた。整った顔立ち、そして――何よりも印象的だったのは、奥にかすかな光を宿したその深い黒い瞳だった。

この目……どこかで見たことがある気がする。

けれど、思い出そうとしても、記憶の糸口は掴めなかった。

瀧ノ上清穂は首を横に振り、かすれた声で静かに答えた。「大丈夫です……ありがとう……」

身体を支えながら必死に立ち上がろうとしたものの、脚の擦り傷と足裏の切り傷が痛みを呼び、膝が崩れ、そのまま再び倒れ込んでしまった。

だが、その瞬間――屈強な腕が彼女の腰を抱き寄せ、力強くその身を抱き上げた。

清穂は藤原雅敏の胸元に倒れ込み、瞬く間に男特有の冷ややかな気配に包み込まれた。

彼女の両手は本能的に彼の胸を押し返し、その掌は衣服越しにもはっきりと感じ取れるほどの鍛え抜かれた筋肉の上に置かれていた。

掌がじんわりと熱を帯び、反射的に藤原を押し返そうとしたが、逆に彼の腕にすくい上げられ、抱きかかえられてしまった。

思わず眉をひそめ、瞳の奥に険しさがにじむ。「何するつもり⁉︎ 降ろしてよ!」

北条渉と三年付き合っていた頃でさえ、せいぜい手をつなぐ程度だった。そんな彼女にとって、見知らぬ男の突然の接触は、どうしても警戒心を呼び起こした。

藤原は視線を落とし、穏やかなまなざしで清穂を見つめた。「怪我をしてる。今すぐ病院に行くべきだ」

「わ、私は……自分で歩けます」 この距離の近さがどうにも落ち着かない。男の冷たい気配が鼻をつき、四方八方から身体を包み込んでくるようで、内側のどこかが張り詰める感覚に襲われた。

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... もっと見るこの物語は、主人公の瀧ノ上清穂が結婚式当日に三年付き合った恋人から突然捨てられ、絶望の淵に立たされるところから始まります。しかし彼女は単なる被害者ではなく、実は海都一の財閥令嬢という秘密を持っているのです。この設定はよくある復讐モノやラブストーリーの中でも、主人公の強さと意志の強さを際立たせています。 現実の経験からも、パートナーとの関係や家族の理解がいかに難しいかは多くの人が共感できるでしょう。特に、結婚が単なる愛だけでなく家族や経済的な背景も絡む“取引”と化すことも現実に近いテーマです。読者は清穂の苦しみと葛藤、そして彼女が自らの力で誇りを取り戻そうとする姿に感情移入しやすいでしょう。 また、物語に登場する藤原雅敏のような男性キャラクターは、クールで謎めいた実業家という王道ながらも魅力的な存在です。彼の「おまえが俺の妻でよかった」という言葉には、単なる恋愛表現以上の信頼と守る意志が感じられ、物語に深みを与えています。 さらに、嫌味や嘲笑で瀧ノ上清穂を追い詰める北条家の複雑な人間関係もリアルに描かれており、家族間の確執や嫉妬など、読者の日常生活の中にある感情が巧みに織り込まれています。 私も他の恋愛小説を読んだ経験から感じますが、このような復讐と再生のストーリーは、一度壊れた愛を乗り越えて成長していく過程を描くことで、読者に強いカタルシスをもたらします。さらに、設定された財閥令嬢や御曹司という要素は、読者のファンタジー心を刺激し、現実にはなかなか味わえないシンデレラストーリーの魅力を倍増させています。 もしこの作品を読む方は、単なるラブストーリーとしてだけでなく、主人公の成長や社会的立場の逆転劇にも注目してみてください。きっと、自分自身の人生の中で困難に立ち向かう勇気をもらえるはずです。 この作品を通じて、恋愛だけでなく家族、信頼、そして自分の価値を再発見するドラマティックな経験を味わってみてはいかがでしょうか?