マルチキャスト / 1対60の帯域消費
「サーバーが高負荷でダウンしました」という相談が届いた。
全国60拠点への同時配信を試みた直後のことだ。
話を聞いて、すぐ計算した。10Mbpsのストリームを60拠点にユニキャストで送ると、
送信元回線の消費帯域は600Mbps(= 10Mbps × 60)になる。1Gbpsの幹線が、
それだけで60%埋まる。そこに業務トラフィックが乗ると、回線は詰まる。
「サーバーのせい」ではなく、設計の問題だ。
マルチキャストに切り替えると、送信元は1ストリーム(10Mbps)を送るだけでいい。
パケットはネットワーク上の分岐点で複製される。帯域消費の比率は1対60。
拠点が100になっても200になっても、送信元の負荷は変わらない。
その代わりにネットワークにVPNを用意しよう。
この設計の切り替え方と、PIM-SMの動作原理を有料記事に詳しく書いた。
▶ https://note.com/videolife/n/n141795585a2a?sub_rt=share_sb
私自身も以前、複数拠点への映像配信で同様の問題に直面しました。ユニキャストで配信を続けているとネットワーク回線がすぐに逼迫し、サーバーのリソース不足と誤認されがちですが、本質的には設計の問題です。 実際、ユニキャスト配信の場合は送信元が各拠点に個別に同じデータを送るため、送信元回線の帯域消費が配信先の数に比例して増加します。例えば10Mbpsの映像を60拠点に送ると600Mbpsも消費し、1Gbps回線の大半を占めてしまい、他の業務トラフィックが圧迫されてしまいます。 一方で、マルチキャストに切り替えると送信元は1回10Mbpsのストリームを送るだけです。ネットワーク内の分岐点でパケットが複製されるため、配信拠点数が増えても送信元の負荷がほぼ変わりません。このため、拠点数が100や200に増えてもスケーラブルな配信が可能になります。 ただし、マルチキャストを利用するには、対応したネットワークの設定が必要です。プロトコルとしてはPIM-SM(Protocol Independent Multicast - Sparse Mode)がよく使われています。PIM-SMの動作原理を理解し、適正にVPNやルーティング設定を行うことで、効率的かつ安定した配信環境を整備可能です。 現場で導入する際は、ネットワーク機器やVPN環境にマルチキャスト対応の有無と設定方法を確認し、段階的に切替えていくことが重要です。また、運用監視を強化して帯域消費やデータ損失の有無を常にチェックすることをおすすめします。 このように、マルチキャストへの設計見直しは全国複数拠点への同時配信で必須の対応となります。私の経験では、これによりサーバー負荷大幅軽減とネットワーク安定化が実現し、業務品質の向上につながりました。ネットワーク設計に悩んでいる方にぜひ参考にしていただきたい内容です。


