真夏の駐車場、アスファルトの照り返しがきついロケ現場から、動画の学校の受講生Aさんが連絡をよこした。「湿度は60%だから、機材は大丈夫ですよね」。そう聞かれて、私はまず気温を尋ねた。「33℃です」。この二つの数字が出た時点で、答えはもう決まっている。近年の猛暑続きで、この手の相談は毎年夏に増えている。
湿度が低いから安心、という感覚は現場では通用しない。結露するかどうかを決めるのは湿度の高さではなく、機材の表面温度が露点温度を下回るかどうか、この一点だけである。マグナス式で算出すると、気温33℃・湿度60%の露点は24.2℃。冷房22℃の車内から出したばかりの機材はまだその温度に近く、露点との差はわずか2℃強しかない。これでは結露して当然だ。
マグナス式の係数はSonntag(1990)による値で、−45〜60℃の範囲で誤差0.35℃以内に収まる。WMOの湿度計算指針で も採用されている、確かな根拠のある式だ。Aさんはその場でスマートフォンの電卓に数式を打ち込み、露点温度を出してみせた。数値さえ分かれば、機材を外に出していいかどうかは10秒で判断できる。天気アプリの湿度は観測地点の値であり、駐車場のアスファルト上の実測とは一致しない。だからこそ手元の温湿度計が要る。「今日は何となく危なそう」という感覚ではなく、「露点が何度だから何分待つ」という数値で動く。この差が、現場のプロと素人を分ける境界線になる。45年この仕事をしていても、勘だけに頼る場面は年々減っている。数字は裏切らないからだ。
その日Aさんは、密閉袋に機材を入れてから車を出るという一手間を加えただけで、結露ゼロで撮影を終えた。判定式はたった一行。だが、それを知っているかどうかで、レンズの残りの寿命はまるで変わってくる。何十万円もするレンズの内部を、たった一つの数式が守ってくれる。これほど費用対効果の高い知識も珍しい。
現場で頻出する条件の露点早見表と、10秒判断の全手順は、動画の学校の有料記事で公開している。
光学レンズ結露の発生メカニズムと対策
https://note.com/videolife/n/n74f00ae3aa10














































