「ビットレートのグラフが天井に張り付いて、そのあと固まるんです」
地方のスポーツ大会を配信している動画の学校の受講生Sさんは、スクリーンショットを何枚も見せてくれた。エンコーダーの出力は適正だ。回線の速度も足りている。なのに試合が盛り上がるほど送信側のグラフが上限に貼り付き、やがて画が止まる。
SRTは、失われたパケットを送り直すための帯域を、あらかじめ取り分けて使う仕組みである。その取り分が足りなければ、再送が本来の映像と場所を奪い合うことになる。
設定を開くと、再送用の余裕を決める値は初期値の25%のまま。会場はモバイル回線で、ロスの多い環境だった。さらに、この余裕を含めた送出の上限が、本番のビットレートに対して窮屈に設定されていた。動きの激しい場面ほど再送が増え、行き場を失っていたのである。
書き出し先のディスクを、空き容量ぎりぎりで編集しているようなものだ。短いカットなら通るが、長い書き出しになった途端に止まる。素材が悪いのではない。置き場が足りないのである。
Sさんは回線の種類に合わせて余裕の割合を引き上げ、その値から送出の上限を計算し直した。計算式はたった一行だが、その一行が効いた。次の試合、延長戦のゴール前の混戦まで、グラフは天井に触れることなく最後まで流れきった。
回線が速いことと、再送の余裕があることは別の話である。クリーンな回線とモバイル回線で、どれだけ差をつけるのか。上限値はどう逆算するのか。その具体的な数値と式を講座に載せてある。自分の配信設定を横に置いて、答え合わせをしてみてほしい。
SRTの再送とST 2022-7の二重化、パケットロス対策の本当の違い (基礎講座)
https://note.com/videolife/n/n57015d7144ab?sub_rt=share_sb
私も以前、地方のスポーツ大会のライブ配信に携わった際、ビットレートのグラフが上限に張り付いて映像が固まるトラブルに直面しました。エンコーダーの性能や回線速度は問題なかったため、原因究明にかなり時間を費やしました。そこで注目したのがSRT(Secure Reliable Transport)の再送用帯域の設定でした。 SRTは失われたパケットを再送するための帯域をあらかじめ確保しておく仕組みですが、デフォルトの設定では25%の余裕しか取っていませんでした。特にモバイル回線のようなパケットロスが多い環境では、この余裕が不足し、再送パケットが映像データの帯域と奪い合う形になってしまうため、映像が止まる問題が生じます。 私が試した解決策は、回線環境に応じて再送用の余裕率を引き上げ、送出上限ビットレートを余裕分を加味して再計算することでした。これにより、動きの激しいシーンや試合の盛り上がりでもグラフが天井に張り付かず、映像が途切れることなく配信が可能になりました。 また、映像素材の書き出しや編集でも問題が起きやすいケースがありますが、これはエンコード後の保存先ディスクの空き容量ギリギリで作業をしているのと同じで、帯域の「置き場」が足りないことに似ています。こうした例えを知ると、設定変更の重要性が直感的に理解しやすくなりました。 SRTの再送設定は一見地味ですが、ライブ配信の安定性を大きく左右します。クリーンな回線とモバイル回線では必要な余裕の取り方も異なるため、各自の環境に合わせて適切に調整することが配信成功の鍵です。 この経験から、ライブ配信を行う人はぜひ自身の設定と今回の計算式を見比べてみることをお勧めします。トラブルの原因が判明し、配信が途切れない改善を実感できるはずです。
