『ロングウォーク』(2025) 84点
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監督:フランシス・ローレンス
製作国:アメリカ
ジャンル:ホラー
収録時間:108分
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2026年劇場鑑賞12本目。
ホラーの帝王、スティーブン・キングの原作を基にした最新作ではあるのですが、この『ロングウォーク』自体は1970年代に『死のロングウォーク』という題で著された模様。50人の男が最後の一人になるまでひたすら道を歩き続けるというシンプルだが非常に過酷なデスゲームです。こういうほとんどの人が興味を抱いてしまいそうな設定を作り上げれるのがさすがはスティーブン・キングと言ったところですが、ファンの間では、デビュー作とも言える今作が半世紀近くもの間、映画化されなかったのは大きな謎でもあったようです。
あらすじは省略 。先述したルールの「ロングウォーク」に志願した若い男性たちが集まり、ひたすら道を歩き続けるというもの。時速4.8kmを下回ってはならず、下回るか止まってしまえば警告を受けます。これが3回蓄積すると、頭を撃ち抜かれるという鬼畜ルール。この警告数は1時間経てば一つなしとなるのですが、いずれにせよ過酷すぎるルール。飲食はもちろん歩きながらですし、一番の問題となる排泄行為も歩きながらしないとカウントされてしまいます。案の定、下痢気味である挑戦者が一人いて、とてつも無い描写を我々は見せられてしまいます。映像からも悪臭が漂ってきそうなリアルさ。靴紐を結び直すことすら命取りのこの状況で、男たちはどう行動するのか。
今作がもし、この設定の下、男たちの欲がむき出しとなり暴力に走るだけのものでしたらここまで評価を高くしなかったと思います。無論、この設定をあらすじで見て興味を抱いたから劇場に駆け込んだというのは間違いないのですが、道中の男たちのドラマにいろいろと考えさせられることもあり、結果的に非常に良い作品と感じました。
今作は理不尽なゲームではあるのですが、人生そのものを指しているなと思いました。立ち止まってしまうと危機に陥り、ちょっとしたミスで死が近くなってしまうというのは人生における不慮の事故に近いものを感じられます。そして、ひたすら長く歩き続けた男たちはもちろん衰弱していくのですが、そこで何かを決心したのか、自分で歩みを止める男もでてきます。それは、ここまで絶え間なく人生を謳歌してきた者が、最後は老衰で亡くなるような感覚と似ていたような気もします。
恐らく低予算であると思われ、100分ひたすら歩いているというシンプルな設定の映画なのに見応えは十分。ひたすら男たちが歩きながらも、自分の人生について語り、意外にも参加者同士で友情が芽生えていくのです。何なら、これまでの人生を失敗し続けて、このゲームの中で生きる喜びを実感した者もいたくらいです。不思議と、ラストのあたりは少し涙目になってしまいました。これだけ人間味のある男たちでも、生き残れるのは絶対に一人なのです。悲しいものです。とにかく、今作が男同士が騙しあったり殺しあったりするような感情も壊れてしまった絶望的映画になっていなくて良かったです。
歩きながら寝れるのかとか少し生物学的に無理があるところもあり、そこが気になる方も恐らくいらっしゃるかもしれませんが、個人的には概ね良作。どうやら『バトル・ロワイヤル』もここから着想を得たようです。やはりホラーの帝王、スティーブン・キング。デビュー当時からシンプルながらもたくさんの人を惹きつけていたようですね。
『ロングウォーク』は、ただ単に恐怖を煽るホラー映画ではなく、人間の本質や人生の儚さを鋭く描いた作品だと思います。実際に鑑賞して感じたのは、長時間のひたすらの徒歩という極限状態が、参加者の心身をじわじわと追い詰めると同時に、本音や友情が露わになる点が非常にリアルで胸に響きました。特にデスゲームという過酷な環境の中でも、お互いを思いやり助け合おうとする場面は、現代社会での人間関係の希薄さを見つめ直すきっかけにもなりました。歩き続けなければ生きていけないというルールは、実は人生そのものを象徴していて、止まったり諦めたりすればすぐに終わってしまう厳しさが共感を呼びます。さらに、歩き続けながらの排泄や飲食のリアル描写は、生命の基本的な営みと極限状況のギャップを強調し、観る側に強烈な印象を残します。映画の低予算感はむしろ作品の緊迫感を高めていますし、シンプルだからこそ登場人物一人ひとりの内面が丁寧に掘り下げられているように感じられました。スティーブン・キング作品の中でも異色ですが、そのデビュー作が長らく映画化されなかった理由も納得です。『ロングウォーク』はデスゲームファンはもちろん、深い人間ドラマを求める映画ファンにもぜひお勧めしたい作品です。


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