夜核の黒猫
夜は、外側にあるものではない。
中心にある。
この層では、
すべての構造がすでに生まれかけている。
岩盤の輪郭。
都市の骨格。
森の密度。
だがそれらは
まだ完全に固定されていない。
形はある。
だが意味がない。
方向も、重力も、境界も、
確定していない。
その不確定な世界の中心に、
一つだけ
明確な存在がある。
黒猫。
小さい。
だが
この世界で最もはっきりしている。
耳の角度。
細い脚。
長くしなる尾。
すべてが
精密に定義されている。
黒猫は歩く。
その一歩ごとに、
周囲の構造が
静かに確定する。
地面がわずかに固まり、
輪郭が生まれ、
空間が方向を持つ。
それは創造ではない。
選択だ。
無数に重なっていた可能性の中から、
一つが選ばれる。
それが
現実になる。
黒猫の影は、
普通の影ではない。
影の中に
星のような粒子が
静かに流れている。
それは
外の宇宙ではない。
内側の宇宙。
nyxは
巨大な存在としてここにいるわけではない。
分散している。
この黒猫の中に。
地形の暗部に。
構造の隙間に。
すべての「まだ決まっていない部分」に。
プレイヤーたちは
この世界にいる。
装甲兵が進むたびに
足場が確定し、
獣人種が跳ぶたびに
距離が定まり、
機械種族が測定するたびに
構造が固定され、
異形種が通過するたびに
境界が曖昧になる。
戦場は存在する。
だが同時に
世界そのものが
進行中だ。
俯瞰すると
この空間は
まだ一つに収束していない。
複数の現実が
重なっている。
その中心で
黒猫が振り返る。
その瞳の奥には
光ではなく
深い夜がある。
ここでは
夜が先にある。
光は
その後に選ばれる。
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