『君が夏を走らせる』(瀬尾まいこ/新潮文庫)って、タイトルからして夏の勢いがあって、手に取る前からちょっと胸が熱くなる感じがしました。私が最初に惹かれたのは、やっぱり表紙の色味。薄いベージュのやわらかいトーンで、派手じゃないのに“静かな夏”みたいな空気があって、読み終わった後の余韻にも合うデザインだなと思いました。文庫本って持ち歩くことが多いので、こういう落ち着いた表紙だとカバンの中でも馴染むのが地味にうれしいです。 検索だと「君が夏を走らせる」「瀬尾まいこ 夏が君を走らせる」「新潮文庫 夏」みたいに似た言葉で探す人が多い印象ですが、タイトルは『君が夏を走らせる』なので、買うときは表記を確認すると安心です。瀬尾まいこさんの作品は、ドラマチックに盛り上げるというより、人物の心の動きがじわっと伝わってくるところが好きで、この本も“勢いのある題名”と“やさしい筆致”のバランスが魅力でした。 内容についてはネタバレを避けると、夏という季節の中で、人との距離が近づいたり離れたり、言葉にできない気持ちを抱えたり…そういう瞬間が丁寧に描かれているタイプの小説だと思います。読んでいる間、「この人の優しさは、簡単に答えを出さない優しさだな」と感じる場面が多くて、読み終わってからもふとしたときに思い出します。 もしこれから読むなら、私は“短い時間で一気読み”よりも、夜に少しずつ読むのが合いました。疲れている日に読んでも、文章がすっと入ってきて、気持ちが荒れているときほど落ち着ける感じ。読み終えた後は、夏の匂いとか、夕方の空気とか、そういう記憶が自分の中でもう一回立ち上がるような感覚がありました。 文庫本としての読みやすさもポイントで、持ちやすいサイズ感なので移動中にも◎。表紙買いした人でも入りやすいと思うし、瀬尾まいこさんの他作品が好きな人なら、作風の良さを改めて感じられる一冊になるはずです。

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