逆転森林
森は上下が決まっていない。
一本の巨大な古木を中心に、
樹木があらゆる方向へ伸びている。
地面からだけではない。
空中の岩盤、
倒立した土壌、
浮遊した根の塊。
そこから新しい樹木が生えている。
アザトースの夢想が、
この領域の「重力方向」を分裂させている。
俯瞰すると、
森は球体の内部のように見える。
中心に古木。
その周囲に、
反転した森が層状に存在する。
様々な種族のプレイヤーが
それぞれ異なる重力面で戦っている。
ある者は木の幹を走り、
ある者は枝の裏側を移動し、
ある者は浮遊した岩の面で戦う。
弾道は直線ではない。
森を曲がりながら飛ぶ。
古木の最上層。
巨大な枝の先に、
小さな黒猫がいる。
黒猫と明確に分かる。
小さな体。
尖った耳。
細い尾。
その輪郭は、
周囲の重力歪みに影響されない。
黒猫は森の中心を見ている。
古木の幹は、
ゆっくりと脈打っている。
それは樹液ではない。
夢想の振動だ。
山羊の姿はない。
この森では、
夢が重力を選び直している。















