「銀で仕上げる、もうひとつの金継ぎ」
「金継ぎ=金で仕上げるもの」——そう思っていませんか?
けれども実際には、器の個性によっては銀で仕上げる”ほうが美しくなることもあります。
光沢を放つ金が主役になりすぎるとき、器そのものの持つ渋みや余韻がかき消されてしまう。
そんなときに選ばれるのが、静けさをまとった「銀仕上げ」です。
私は輪島で修行し、これまで300点以上の器を修復してきました。
銀座の工房では、器を前にしながら必ずこう問いかけます。
「この器は、どんな表情で生まれ変わりたいのか?」と。
金で仕上げれば華やかに、銀で仕上げれば凛とした佇まいに——。
どちらを選ぶかで、器の“人格”が変わるのです。
銀仕上げは時間とともに黒ずみ、いぶし銀のように深みを 増していくその変化こそが魅力です。
経年によって現れる灰色の陰影は、まるで人の人生のように静かに熟していく。
「金とは違う落ち着きが好き」「いぶし銀の変化が美しい」——そんな声を多くいただきます。
金が“瞬間の輝き”なら、銀は“時間の美”です。
ただ修理するのではなく、器の表情を生かす仕上げを選ぶことで、ものに再び命が宿ります。
そして修復を通じて、使う人の中にもものを大切にする美意識が芽生えていくのです。
銀の穏やかな光は、器を包み、心を映す。
それは、完璧ではないからこそ美しい——日本の美意識そのものです。
金継ぎの修復には一般的に金を使用しますが、銀仕上げは特に器の渋みや落ち着きを大切にしたい方におすすめです。私も修復を重ねる中で、銀のいぶし銀のような風合いが時間と共に深まり、その変化を愛おしむ方が多いことに気づきました。 また、100均アイテムで簡単に作れる「なんちゃって金継ぎ」やエポキシパテを用いた補修も増えていますが、本格的に器の個性を活かすならやはり伝統的な技法である銀仕上げが優れています。銀は自然 な経年変化が楽しめ、使用者の歴史を刻み込むように仕上がるのが魅力です。 特に陶器の欠けた部分を補修する際、銀の柔らかな存在感が器全体のバランスを崩さず、凛とした美しさを引き立てます。私の工房では、お客様と相談しながら器が望む“表情”を見極め、金か銀かを選ぶことを大切にしています。銀仕上げを選んだ器は、光の当たり方や歳月の経過で独特の陰影を帯び、まるで使い手の人生を映し出すかのようです。 このように金継ぎは単なる補修ではなく、器に新たな命を吹き込む芸術。銀仕上げを選ぶことで、器と使う人の間に美意識のこもった物語が生まれるのです。


















































