動画の学校の受講生Cさんは、新しい中継車の立ち上げを任された技術者だ。「単独で使っているときは何も起きないのに、本線に切り替えた瞬間だけ、決まって一瞬だけ音が消えるんです。テストのたびに再現するので、偶然じゃないのは分かってるんですが」という相談を受けた。声には焦りがにじんでいた。稼働開始まで、もう時間がなかった。
現場で機材の配線図を一緒に確認した。映像系はきちんとハウスリファレンスにロックされている。だがDolby Eエンコーダーだけ、内部クロックのまま動いていた。Dolby Eは音声データの合間に「ガードバンド」という無音の区切りを挟み、それを映像の切り替わり目に合わせることで、壊れずに切り替えができる仕組みになっている。基準がずれていれば、切り替えの瞬間だけ音が欠けるのは、偶然ではなく必然だった。規格が定める安全な窓は理想位置から前後わずか数十マイクロ 秒しかない。
エンコーダーのリファレンス設定を映像系と統一した瞬間、症状はぴたりと止まった。何度切り替えテストを繰り返しても、二度と再現しなかった。Cさんは「原因がこんなに小さな設定だったとは」と何度も呟いていた。大きなシステムを疑っていたが、答えは1本のケーブルの先にあった。
見えない基準のズレほど、現場では厄介なものはない。だが探し方さえ知っていれば、答えは必ず見つかる。それを実感できたのが、この夜だった。稼働初日、Cさんの中継車は何十回と本番切り替えを重ねても、一度も音を欠かすことなく走り切った。
音声はPCMだけじゃない IP化した瞬間、5.1chの音声がノイズになった
https://note.com/videolife/n/n95c203438195
























